2016年9月2日、3日
9月2日、3日は、先日のマスタークラスでご一緒した、親友のカレン・カプフェレルさん指揮の女声合唱団とのコンサートでした。
初日はメトーディスト・アンデューズ教会にて。
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ここにはピアノがなく、性能の良い電子ピアノでの演奏会でした。強弱がコントロール可能とはいえ、楽器自体の振動で音を生む実際の楽器とは比較にならない、表現上の限界がありましたが、教会の響きと雰囲気に助けられながらの盛会になりました。

9月2日のコンサートにて、ソロの演奏後。


9月3日
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3日は、山の上に立つ、11世紀に建てられたサン・マルタン・ド・コルコナク教会にて、前日と同じ「愛と自然」をテーマにした以下のようなプログラムを演奏しました。

フォーレ:独りきり
フォーレ:ある修道院跡にて
(以上、カレン・カプフェレルさんとのデュオ)
フォーレ:小川
ベルリオーズ:オフェリーの死
ドリーブ:森の妖精たち
(以上、カレン・カプフェレルさん指揮女声合唱団と)
ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ(ソロ)
~休憩~
モーツァルト:トルコ行進曲(ソロ)
シューベルト:セレナーデ
(カレン・カプフェレルさん指揮女声合唱団と)
ドビュッシー:ノクターン(ソロ)
ドビュッシー:3つのビリティスの歌
(カレン・カプフェレルさんとのデュオ)
エルガー:雪
マスネ:女声合唱とピアノのための「花の詩」より 
花々の賛歌、
小枝の踊り、
五月の歌 (以上、カレン・カプフェレルさん指揮女声合唱団と)
~アンコール~ 
ドリーブ:森の妖精たち(カレン・カプフェレルさん指揮女声合唱団と)






1つの90分の演奏会で、歌曲の伴奏、合唱の伴奏と、ソロの演奏を織り交ぜながら弾き続けるのは、意識の切り替えが難しい初めての冒険でしたが、実際に弾ききってみるととても美しい流れのプログラムになりました。


ここのピアノは、1903年に製造されたブリュートナーのピアノで、ドビュッシーが好んで使用していたものと同じモデルということです。
この場所にもご縁があって、2年前にこのピアノが教会に入った時に、弾き初めとしてリサイタルをさせていただいて以来、何度か弾かせていただいる、愛着のある楽器です。これまでにロシアのどこかで所有されていた時代もあるのだとか。往年のピアノロールの録音から聞こえてくるような音がします。
ドビュッシーの作品の中では、ベースの長く伸ばされた響きの上で、並行的な和声が動いていく場所がたくさんでてきますが、そこは右のペダルの踏み加減で調整するのか、真ん中のペダルを使うのかといった議論や試みは、ピアニストの間でもよくなされる部分です。
それが、残響と共振のための、ハンマーで打たれない4本目の弦が張られているこのピアノでドビュッシーを弾くと、右のペダルだけでもそれがとってもうまい具合に運びます。ドビュッシーが聴いていた音ってこんな感じだったのかなぁ…という瞬間にたくさん出会ったステージでした。

【2016/09/03 23:59】 活動報告 | トラックバック(-) | コメント(-) | page top↑
2016年8月28日~9月1日
8月28日、29日

音楽祭が終わった週末、本番の中休みに友人家族の親戚を訪ねて、アヴィニョンとその周辺へ、車の旅に同行しました。



岩肌に挟まれた自動車道を抜けるといよいよアヴィニョン(だそうです、初めてなので…)


城壁に囲まれたアヴィニョンの街に到着。


市街地へ。


アヴィニョンのオペラ座。


教皇宮殿



宮殿の屋上から街を一望する。ゴッホやセザンヌに描かれている、プロヴァンス地方の太陽の光、これまで見たことのないまぶしさでした。サングラスなしには目を開けていられないほどまぶしく明るかったです。持っていなくてほぼ薄眼で街を歩いていた僕はさぞ怪しかったことでしょう…写真ではこれでも、自動的に光が相当抑えられて写っています。


アヴィニョン近郊の街にそびえる城砦


色は違うけれど、坂や階段の多い街並みに、ふと故郷の長崎を想いました。


アヴィニョンの橋で~🎶 のアヴィニョンの橋は途中で切れている。


アヴィニョンの橋の夕暮れ


橋の真ん中には小屋のような部分が。かつて橋が長く続いていたころには転々とこういう関所のような場所があったそうだ。


振り返るとアヴィニョンの街並みが。この辺り一帯の歴史地区は世界遺産に登録されています。左の石垣の上に松のような木があり、そこだけ見ると日本のお城の様にも見えました。


日本語のオーディオガイドに興味津々。フランス語版と聴き比べ。


9月1日

友人のお嬢さんたちは学校の新年度が始まりました。
小学校に上がった末っ子のお嬢ちゃんの始業式への見送りに街へ同行しました。
とても美しい朝でした。
【2016/09/01 23:59】 活動報告 | トラックバック(-) | コメント(-) | page top↑
2016年8月22日~27日
8月22日

ラサルも自然豊かな美しい街です。8月22日から27日まで、ここで、同じくピエール=アンリ・シュレブ氏が芸術監督を務められるヴィヴ・アルト音楽祭が開かれました。初日の朝、市庁舎で行われたミーティングに向かう途中で撮った写真です。


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音楽祭のポスター。今回は中国の伝統楽器と音楽がひとつのテーマで、中国語の表記が取り入れられていました。


ラサルは去年の夏にリサイタルで訪れて以来、たびたびお邪魔している街です。青空に映える明るい街の色に気持ちがはずみます。


夕方、コンサートの準備が着々と進みます。ここには2015年の2月に入った小さな古いプレイエルのピアノがあり、同年の夏のリサイタルが、このピアノを使った最初の公開演奏会ということで、弾き初めをさせていただいた思い出の場所とピアノです。完全帰国直前の昨年冬にはショパンの1番協奏曲を演奏しました。小さいのにとても豊富な色とカンタービレを持った楽器で、特にショパンやフランスものを弾くと嬉しそうに歌ってくれます。


開演前には満員になった会場。


スー・チェンさんと、シューマンの4つのおとぎ話Op.113


ピエール=アンリ・シュレブさんと、クロード・ボリングのタンゴ、プーランクの羊飼い、ベンジャミンのジャマイカン・ルンバを演奏しました。


ソリストが小さなステージの上に立ち、ピアノがその下でという慣れない設定でしたが、プレイエルのピアノが繊細なヴィオラの音とよくマッチしてくれました。



2つのヴィオラとピアノでは、サミュエル・テュパンのヴェルシオン・ラティーヌという、ミロンガとフーガからなるタンゴと、ジョセ・ホワイトのラ・ベラ・キュバナを演奏しました。

この他に二胡のチュ・ジャンボさんと2曲演奏しましたが、本番の写真がないのが残念です。

シューマンの晩年の作品、ラテン系諸国の音楽、中国の南部・北部の音楽…と、2時間で世界一周するようなプログラム、楽しく演奏しました。

終演後、去年のリサイタル以来いつも熱烈に応援に来てくれている地元の小さな音楽家達が面会に来てくれました。
音楽祭では毎日、日中はそれぞれの演奏家たちによるマスタークラスが、夜はコンサートが開かれました。



8月23日

この日のコンサートでは、まずトップバッターでソロを弾きました。曲はドビュッシーのノクターン。

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続いて友人指揮者で今回女性合唱のマスタークラスを受け持っているカレン・カプフェレルさんが歌う、フォーレとドビュッシーの歌曲を伴奏しました。


スー・チェンさんとディーリアスのヴィオラ・ソナタ第2番。

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この日は他に、チュ・ジャンボさんとご主人、お嬢さんによる二胡のトリオや、二胡と古琴のデュオなどが演奏されました。
今年の音楽祭は中国の伝統楽器が一つのテーマになっていて、中国からたくさんの演奏家と若い音楽家たちが参加していました。




8月24日

お昼の打ち合わせ中の一コマ。スーパーマンはフランス人アコーデオン奏者のグレゴリー・ダルタンさん。リハーサルの合間に、せっかくの機会だったのでタンゴのリズムを是非聞かせてほしいという、僕のリクエストに快く応えてくださり、色々と弾きながらレクチャーしてくださり感銘を受けました。今後タンゴを弾くときには活かせそうです。




8月25日

この日のコンサートでは、マスタークラスに参加していた、スー・チェンさんのお弟子さんのヴィオリスト、ウェン・ボー君と、クラリネットのマリー・エレヌさんと、モーツァルトのケーゲルシュタットトリオをご一緒しました。


コンサートの後半には、マスタークラスでご一緒した女声合唱団と、ベルリオーズのオフェリーの死とシューベルトのセレナーデ(有名な歌曲の方ではなく合唱曲として書かれた素敵な作品)を演奏しました。演奏前には歌詞の朗読が。


フランス語の歌とドイツ語の歌とでは、伴奏する身としては言葉の性質に寄り添うために、前奏の時点で音楽の運びと抑揚の性質を切り替えます。自分の身体の中から感覚を変える必要があるので、2曲目を弾き始める前はガッチャッと前輪駆動から後輪駆動にギアチェンジでもするような感覚です。



この日はヴィオラ、二胡、アコーデオン、クラリネット、ハープのマスタークラスに参加していた若い人たちや先生方も多くが演奏に参加しました。



音楽祭期間中、日中は女声合唱のマスタークラスで伴奏を務めました。

8月27日
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音楽祭最終日はピアノの無い会場だったので、素晴らしい演奏を客席から鑑賞しました。
【2016/08/28 00:00】 活動報告 | トラックバック(-) | コメント(-) | page top↑
2016年8月19日~21日

今回最初の演奏会は8月21日にル・ポエット・ラヴァルという町でした。

芸術監督の、フランスを代表するヴィオラ奏者で、パリ国立高等音楽院教授のピエール=アンリ・シュレブ氏、英国王立音楽院客員教授/北京中央音楽院教授のヴィオラ奏者スー・チェンさん、同じく北京からいらした二胡奏者のチュ・ジャンボさんら3名と共演する、「偉大な音楽的出逢い」と題したコンサートでした。


共演者達とのリハーサルの為、8月19日に友人宅を発ち、車を乗り継ぎ5時間程移動して現地に入りました。
小高い山の上に古城が立ち、そのお城の一部のような小さな美しい町でした。


リハーサルに使用したのは初めて出逢ったドイツ製のピアノ。豊かな倍音を含んだ丸みのある暖かい音でした。


実は二胡のチュさんの伴奏もあるというのは、情報の伝達ミスで現地入りしてから知らされ、2日半の滞在中僕がこの部屋に缶詰になり、時々共演者の方々が交代で見えてリハーサルを重ねるという日程になりました。


窓の外にピントを合わせると絵のような雰囲気の写真に。素敵な空間でした。


ピエール=アンリ・シュレブさんとのリハーサル。大先生との初音出し緊張しましたが、自然体で柔らかい音色のピエール=アンリさんと方向性が自然に合い、気に入っていただけてホッとしました。


スー・チェンさんとのリハーサル。長くロンドンにもいらっしゃったスー・チェンさんからは、流暢な英語で次々と的確な指示をいただきながら、リハーサルがどんどん進みました。


二胡のチュー・ジャンボさんとのリハーサル。英語もほとんどお話になりませんでしたが、片言の英語と身振り手振りと演奏を通して、自然でとても明確なアイディアを何度も納得いくまで伝えていただき、決して妥協されないチュさんのプロフェッショナルなご姿勢と、驚くべき技巧、情熱と優しさ溢れる、自然で人間の声のような音楽に、非常に胸を打たれました。


コンサート前日、当日と晴天に恵まれ、美しい景色でした。




本番の会場。ピアノは1月に入ったばかりの新しいスタインウェイA型。特に地方では色々なコンディションのピアノに出会う覚悟が必要な中、安心して演奏することができました。


会場となった芸術センターは、ムーミンの家のような縦長の建物が美術館になっていて、その一番下がコンサート用の空間になっていました。



開演前に主催者から出演者の紹介がありました。舞台袖からの1枚。150席ほどの空間で満員のお客様に聴いていただきました。


終演後、共演者、主催者の方々と。


22時過ぎに終演後、すぐに着替えて、芸術監督のシュレブさんの運転する車で出演者4人、3時間の車移動でした。
夜中の1時頃到着。翌日はラサルという街のヴィヴ・アルト音楽祭開幕コンサートで同じプログラムを演奏します。
【2016/08/22 23:46】 活動報告 | トラックバック(-) | コメント(-) | page top↑
2016年8月15日~16日
8月15日から9月12日まで、フランスで音楽祭その他色々な演奏会に出演するため渡仏しました。帰国後に続いた演奏会と併せて、あまりに濃い体験となりました。


8月15日

出発したこの日は、昨年亡くなった恩師、アルド・チッコリー二先生の誕生日。今年の初めに航空券をとった時に、日程の詳細が未定でも出発時期が重なるのがわかっていたので、少しでも先生の近くでこの日を迎えたいと思いこの日の渡仏を選びました。
4ヶ月ぶりのパリには夜着いて一泊眠るのみ。翌日午後にはTGVで南へ移動です。


8月16日

超多忙な恩師、パリ・エコールノルマル音楽院教授のポール・ブラシェー先生と奇跡的に時間が合い、昼食をご一緒した後ホームまで見送っていただいたところで。2008年10月から今年3月までの留学中には、故アルド・チッコリーニ先生、故フランス・クリダ先生と、その両先生のお弟子さんでありながら、両巨匠の家族同然の存在としてマネージャーも兼任されていた、このポール・ブラシェー先生の3人に師事しました。ピアノを弾くことについてこの上なく精通したこの先生との勉強がなかったら、二人の個性の異なる巨匠のもとで本質的なことを吸収しながら、同時にこれほどのスピードでこれほど確実に右手のフォーカル・ジストニアを克服することは叶っていなかったと思っています。人間として、師弟でありながら大切な友人としても関わらせていただいているポール先生には感謝の念が絶えません。





パリからニームまで高速鉄道TGVで約3時間。


明るい乾いた夏色の車窓に時々目を移しながら、数日前に追加で送られてきた楽譜を勉強していると3時間はあっという間に過ぎていきます。。


ニームはジーンズの生地「デニム」(Des Nîmes)の発祥の地です。ニームの駅からすぐにバスに乗り換えて終点まで1時間半。かなりの距離なのに、料金は破格の1.5ユーロ!(約200円弱)
パリ市内の路線バスであれば、どこまで乗っても、つまり隣の停留所まで200メートル位でも2ユーロです!


田舎道をひたすら走ります。








セヴェンヌ地方の入り口の美しい街 アンデューズに差し掛かる。


アンデューズは、磁器の花瓶・植木鉢で有名な街です。



更に山に囲まれた道を進むとどんどん秘境の風景に。

自然豊かな国立公園のセヴェンヌ地方は、ルイ14世の時代にプロテスタントが弾圧された際、カトリックを擁護する王政と、反乱をおこしたプロテスタントとの間で壮絶な戦いの繰り広げられたところだそうで、その頃からの石造りの古い建物がたくさん散在しています。


バスの終点から友人の車で更に30分程走って、山に囲まれた友人指揮者の家に到着。月夜にヤギの鳴き声とその首輪にかかったベルの音が響きます・・・
【2016/08/17 00:00】 活動報告 | トラックバック(-) | コメント(-) | page top↑
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